本番になると力んで動けなくなる人へ|試合やスパーの緊張と体の話

脱力・力み

練習ではできるのに、本番になると急にできなくなる

サンドバッグやミット相手なら、思った通りに動ける。コンビネーションもすっと出る。それなのに、いざスパーリングや試合になると、体が急に重くなる。手が出ない。頭が真っ白になって、覚えたはずの動きがどこかへ行ってしまう。

そんな経験をしたことはありませんか。

相手を前にした瞬間、肩にぐっと力が入る。呼吸が浅くなって、足が地面に張りついたように動かない。終わってから「なんであんなに固まっていたんだろう」と悔しくなる。練習の自分と本番の自分が、まるで別人のように感じられることがあります。

これは、気持ちが弱いからでも、経験が足りないからでもありません。何年も続けている人でも、本番になると体がこわばる、という悩みはよく聞きます。

「落ち着け」と言われても、体が言うことを聞かない

緊張してこわばっているとき、まわりからは「落ち着いて」「力を抜いて」と言われます。自分でもそうしたい。でも、そう思えば思うほど、体はかえって固くなっていきます。

これは多くの人が経験することです。「緊張するな」と念じるほど緊張してしまう。あの感覚に近いものがあります。

本番で相手と向き合うと、体は自然に身構えます。守ろうとして、無意識にぐっと力が入る。これ自体は危険から身を守る自然な反応で、意思の力だけで消せるものではありません。

だから「気の持ちよう」でどうにかしようとすると、たいてい空回りします。問題は心の持ち方だけでなく、体がこわばりやすい状態になっていることのほうにあるからです。

緊張で力むと、動きはどう変わってしまうのか

緊張で力むと、動きはどう変わってしまうのか

体に余計な力が入ると、動きにはいくつかの変化が起きます。

まず、スピードが落ちます。力を込めた筋肉は、動き出す前からブレーキがかかったような状態になります。アクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなもので、速く動こうとしても、思うように加速しません。

次に、反応が遅れます。全身がこわばっていると、相手の動きに合わせてすっと動くことが難しくなります。足が居着いて、頭で「動け」と思っても体がついてこない。もらわなくていい一発をもらってしまうのも、この固まりが関わっていることがあります。

そして、疲れが早く来ます。ずっと力を入れっぱなしの体は、動いていない時間も消耗しています。数ラウンドでへとへとになってしまうのは、スタミナ不足というより、力みっぱなしで無駄にエネルギーを使っているせいのこともあります。

力んでいるのに動きが軽い、力を入れているのにすぐバテる。この一見ちぐはぐな現象は、体のこわばりが引き起こしていることが多いのです。

気持ちだけ落ち着けようとしても、体はゆるまない

緊張への対処として、よく紹介されるのが深呼吸やルーティンです。もちろん、それで気持ちが少し楽になることはあります。試す価値はあります。

ただ、気持ちが落ち着いても、体のこわばりが残ったままのことがあります。頭では「大丈夫」と思っているのに、肩は上がったまま、手のひらには汗がにじんでいる。心と体がちぐはぐな状態です。

これは、緊張したときに力が入る場所が、ふだんから力の抜けにくい状態になっているからかもしれません。もともと肩や腕に力が入りやすい人は、緊張が加わったときにいっそう固まりやすくなります。

逆に言えば、ふだんから余計な力みの少ない体でいられれば、緊張という負荷がかかっても、動きが大きくは崩れにくくなります。心を鍛えるより先に、体の状態を見直したほうが早いことがある、というのはこういう意味です。

体が整っていると、緊張しても動きが崩れにくい

体の土台がどっしり安定していると、上半身は余分な力を使わなくてよくなります。すると、緊張してもすぐには固まりきらない。同じプレッシャーの中でも、動ける自分でいられる時間が長くなります。

まずは、力みのない状態を一度味わってみる

「力を抜いて」と頭でわかっていても、本番になると力が入ってしまう。この「わかっているのにできない」を越えるには、力みのない状態を、緊張のない場で先に知っておくのが近道です。整った体の感覚を一度つかんでおくと、本番で固まりかけても立て直しやすくなります。

本番で固まってしまうのを、ずっと自分のメンタルの弱さだと責めてきたのなら、少し肩の荷を下ろしてください。固まりの多くは心ではなく、体のこわばりから始まっています。心を鍛え直す前に、体のほうを見直すだけで変わることがあります。

力みの少ない体で本番に向かうと、動きはどう変わるのか。実際に体で確かめてみませんか。

力みの抜けた体で本番に立ってみませんか
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