スパーやマスで、こんな経験はありませんか。
相手に近づこうとすると、パンチが届かない。思いきって踏み込もうとすると、なんとなく怖くて足が止まる。気づいたら相手に追われるように後ろへ後ろへと下がっていて、ロープ際でもらってしまう。
ジムに通い始めて数年経っても、「フットワークだけはどうも上手くいかない」と感じている方は少なくありません。パンチの打ち方は練習できても、足の使い方は感覚的な部分が多く、どこから直せばいいか分からないまま続けている方が多いです。
この記事では、フットワークの土台となる体の動かし方から、間合いのつかみ方・踏み込み・下がり方まで、順を追って整理していきます。
フットワークの土台は、すり足と重心の置き場所にある

フットワークでまず意識したいのが、足のどこで床を蹴るかという点です。
かかとで床を蹴って移動しようとすると、一歩ごとに体が上下に揺れて重心が浮きます。動くたびに体が跳ねるような状態になり、次の動作への準備が遅れてしまいます。
代わりに意識したいのが、足の親指の付け根の下あたりにある、母趾球(ぼしきゅう)と呼ばれる部分です。ここで床を軽く押すようにして、スケートのように床を滑るイメージで動きます。これがすり足です。重心を浮かせずに平行移動することで、移動しながらでも次の動作を取りやすい状態をキープできます。床から足を離して跳ねると「ドン」と音がしますが、すり足だと「シュッ」と擦れる音になります。この音の違いが、一人で練習するときの目印になります。
基本の構えでは、重心は両足の真ん中に置きます。どちらかの足に乗りすぎると、そちら側からの動き出しが遅くなります。いつでもどこへでも動ける状態を保つために、左右どちらにも重心が偏らないように意識します。
膝の使い方も関係しています。膝をがちがちに深く曲げると、かえって動きが重くなります。力を入れすぎず、軽くゆるめた状態を保つと、すっと動き出しやすくなります。
フットワークの練習で陥りやすいのは、ステップが大きくなりすぎることです。一歩を大きくとろうとすると体が開いて、その瞬間にもらいやすくなります。足を固定してしまうことや、動きながら自分の足元を見てしまうことも、動きを止める原因になります。視線は相手に向けたまま、足は感覚で動かせるようにしていくことが大切です。
距離(間合い)がつかめないと感じたら
間合いとは、パンチが届くか届かないかの境目の距離のことです。
間合いをつかむために最も使えるのがジャブです。ジャブを出して、相手に当たるかどうか、あとどれくらい近づければ当たるか、その感覚を繰り返しながら距離を測っていきます。この「ジャブで測る」という意識があるかどうかで、間合いのつかみ方がずいぶん変わります。
格闘技での距離は、単純に「近い・遠い」だけではありません。距離・角度・リズムの組み合わせで間合いは変わります。真正面にまっすぐ立った状態と、少し斜めに角度をずらした状態では、同じ距離でもパンチの届きやすさが違います。相手のパンチが届かず、自分のパンチは届く。そのポジションを探していくのが間合いの基本です。
最初はなかなかつかみにくいですが、ジャブを出すたびに「今の距離はどうだったか」を意識するだけで、だんだん感覚として体に入ってきます。
踏み込もうとすると足が止まってしまう方へ
踏み込みが難しく感じる理由のひとつは、踏み込もうとするときに無意識に前に体を傾けてしまうことです。上体が前のめりになった状態で踏み込むと、バランスを崩してつんのめりやすくなり、逆に相手のカウンターをもらいやすい状態になります。
踏み込む際の基本は、上体は真っすぐのまま、足だけで体を前へ運ぶイメージです。前足から動かして、すぐに後ろ足を引き寄せます。前足と後ろ足が交差してしまうと、体が縦に一直線に並んでしまい崩れやすくなるので、前足が出たらすぐ後ろ足もついてくるよう意識します。これもすり足で、ふわっと前へ滑るような動きです。
踏み込む幅は最初から大きくしなくて構いません。小さく速く出ることを意識して、徐々に踏み込む距離を広げていく方が身につきやすいです。大きく踏み込もうとするほど体が開いて、かえって打ちにくくなることが多いです。
母趾球で床を軽く押して、ふっと前へ出る感覚をシャドーボクシングや軽いミット打ちの中でくり返し確認してみてください。
気づいたら下がるだけになっている方へ
後ろへまっすぐ下がる動きは、攻撃の続く相手に対しては防戦一方になりやすい状況をつくります。後ろに下がるほど自分の動ける空間が狭くなり、ロープやコーナーに詰まってしまいます。
なお、まっすぐ下がるときは、前進とは逆で後ろ足から動いて前足を引き寄せます。前足から下がろうとすると足が交差して崩れやすいので、下がるときは後ろ足が先、と覚えておくと安全です。
まっすぐ下がる代わりに、横(サイドステップ)に動くことを取り入れると、相手の正面から外れることができます。相手が正面からしか見えていない状態で追いかけてきたとき、横へ動いて相手の斜め後ろや側面に出られると、攻める位置に移れます。
さらに使えるのがピボットです。前足を軸にして、ぐるっと向きを変える動きです。これを使うと、相手の攻撃の方向から外れながら、自分は打てる位置に入ることができます。下がるだけでなく、横・角度の変化を加えることで、動きの選択肢がぐっと広がります。
下がるときも大切なのは、足を止めないことです。止まった瞬間が一番もらいやすいので、次の動きにつながる状態を保ちながら動き続けることを意識します。
ジムで意識してみたい5つの入口
フットワークはまとめて改善しようとすると混乱しやすいです。一度に全部を直そうとせず、今日はこれだけを意識するという一点集中で練習する方が身につきやすいです。
まず意識できそうなことを5つ挙げます。
ひとつ目は、母趾球で床を押してすり足で動くことです。かかとで蹴って跳ねる動きを、滑る動きに変えることから始めます。
ふたつ目は、重心を両足の真ん中に置いて、体を浮かせないことです。重心が片方に乗りすぎていないか、動きながら確認します。
みっつ目は、踏み込むときに前足から出て後ろ足をすぐ引き寄せることです。交差しないよう、小さく速くを意識します。
よっつ目は、ジャブを出して距離を測る癖をつけることです。「今の距離はどうか」を毎回意識するだけで、間合いの感覚が変わってきます。
いつつ目は、まっすぐ下がるだけでなく、横への動きや角度をつける動きを試してみることです。サイドステップから打つ流れをシャドーで入れてみてください。
シャドーボクシングやミット打ちで、パンチと同時にこれらのフットワークを意識するのが、日常の練習への入れ方としておすすめです。無理のない範囲で、少しずつ試してみてください。
ステップも間合いも意識しているのに、体が思うように動かない方へ
「頭では分かっているのに、スパーになると体がついてこない」「意識するほど動きが固まってしまう」という感覚は、多くの格闘技練習者が通る場面です。
技術的なポイントを理解しても、体が反応するより先に力みが入ってしまうことがあります。力が入った状態では、足の一歩目が遅れたり、移動の途中で重心が揺れたりしやすくなります。
フットワークの軽さや、間合いの取りやすさは、技術の習得と同時に、体の力みの抜け具合や動き出しやすさの状態にも支えられています。体の使い方・状態が整ったことで、一歩目が早くなった・動きが軽くなったという方もいます。
力むほど動きは遅くなる。動かす前に整える。そういう感覚が、フットワークの安定につながっているということは、頭の片隅に置いておく価値があります。
この考え方に関連する記事も参考にしてみてください。
格闘技の基礎的な体の使い方についてはこちらもどうぞ。
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