ミットを打ち終わったあと、コーチにこう言われたことはないでしょうか。「肩、上がってるよ」と。
言われた瞬間は「そうか」と思う。でも次のコンビネーションでは、また肩がすくんでいる。自分でも気づいているのに、直せない。そういう経験をしている方は、格闘技の世界にとても多いです。
肩の力が抜けないのは、意識が足りないからでも、センスがないからでもありません。肩だけを見ていることが、そもそも問題の入口になっています。
格闘技でよくある「肩が上がっている」って、どんな状態?

構えに入った瞬間、肩がきゅっと上がる。パンチを出そうとすると、肩だけが先走ってしまう。そういう動きは、格闘技を始めたばかりの人だけでなく、数年続けている人にも残っていることがあります。
「肩が上がる」というのは、体が緊張しているサインです。相手を前にして無意識に身構える。それ自体は自然な反応です。ただ、その緊張が肩にたまったまま打撃に入ると、力の流れが途中で詰まるような動きになりやすいです。
パンチでもキックでも、体全体が連動して初めて力が伝わります。肩が浮いていると、その連動がどこかで切れてしまいます。「打っているのに軽い」と感じるのは、そういう状態のことが多いです。
構えに入るたびにふわっと肩が浮いてしまう方も、「肩が上がっているのは分かっている。でも打とうとすると自然にそうなってしまう」という感覚は、多くの方が経験することです。意識と体の動きがかみ合っていない、という状態です。
肩の力を抜こうとするほど、肩ばかり意識してしまう
「肩の力を抜いて」という指摘を受けると、次の打撃では肩のことが頭を占領します。肩を下げようとして、かえって肩周りが固くなってしまうことがあります。
これは多くの人が経験することです。意識を向けた部位は、かえって緊張しやすくなります。「リラックスしろ」と言われるほど緊張するのと、構造は似ています。
肩抜きをしようとしたとき、「どこかに力を込めながら肩だけを抜く」というのは、実はとても難しい操作です。肩の力みは、肩単体の問題でないことが多いからです。
実際に格闘技の練習者に多いのは、「肩抜き」を直接やろうとして、動きがかえってぎこちなくなるパターンです。肩を意識するあまり、姿勢全体がバラバラになってしまう。そうなると、パフォーマンスはむしろ下がります。「抜こうとして抜けない」というのは、意志の問題でなく、やり方の問題であることが多いです。
肩の力が抜けたら、突きも蹴りも変わったという話
格闘技の指導に携わっている方から聞いた話です。数年ボクシングを続けていた方が、いくら練習しても「力んでいる」という指摘が消えなかったそうです。肩を下げようとするたびに、動きがぎこちなくなっていた。
そこで肩だけでなく、体全体の状態に目を向けるようにしたところ、肩がすっと落ちやすくなった方がいたということです。本人の言葉によると、「パンチを出したときに、ぐっと体ごとついてくる感じがした」とのことでした。
蹴りでも似た変化が起きることがあります。キックボクシングを続けている方で、蹴りがブレる・軸がぶれると感じていた方が、肩の緊張が落ち着いてきたときに、蹴りの安定感が変わったという話があります。「体がまとまってきた感じがする」という表現が印象的でした。
また別の話として、空手の組手に取り組んでいた方が、相手との距離が縮まると無意識に肩がすくんでしまうことを悩んでいたそうです。意識で直そうとしても試合では出てしまう、という状態が続いていたと聞きました。体全体の使い方を変えることに取り組んだところ、「相手が近くなっても前より落ち着いていられるようになった」という話がありました。
肩抜きができてくると、突きも蹴りも伝わり方が変わってくる、という事例は複数あります。
肩の力みがなくなりにくい理由は、肩だけの問題じゃないから
「なぜ肩の力が抜けないのか」という問いに対して、「肩の筋肉が緊張しているから」と答えるのは、原因の一部しか見ていません。
体全体の姿勢や、立ち方の状態が影響していることがあります。たとえば、重心が前にかかりすぎていると、体のどこかでバランスを補正しようとします。その補正が肩や首に出ていることがあります。
または、腰から下が固まっていると、上半身だけで動きを生み出そうとします。上半身が仕事を抱えすぎると、肩に緊張が集まりやすくなります。肩だけに注目してケアしても、その原因が別の場所にある場合、同じ状態が繰り返されます。
肩の力みは「部分の問題」ではなく、「全体のバランスの結果」として現れていることが多いです。格闘技の指導者の間でも、肩抜きを直接指導するより、立ち方や体全体の使い方を見直すほうが変化しやすいという話は、よく耳にします。
感覚としては、体の土台がどっしり安定してきたとき、肩はすっと落ちやすくなる、というイメージに近いです。
長年格闘技に取り組んできた方でも、「肩抜き」だけを切り取って練習し続けてきたが変わらなかった、という経験をお持ちの方がいます。一方で、立ち方や全体の体の使い方を変えることで、肩の状態が変わりやすくなったという話も出てきます。部分を直そうとするのでなく、全体から整えていくほうが変わりやすいことがあります。
立ち方を見直したら、肩が落ちやすくなったという話
立ち方と肩の緊張は、一見つながっていないように見えます。でも、立った状態の体のバランスが、肩の位置に影響しています。
空手を長年続けてきた方が、構えの前段階、ただ「立つ」という動作に着目したときに、肩の状態が変わりやすくなったという話があります。「力を入れているわけではないのに、なぜか肩が下がっている感じがした」という言葉が残っています。
立ち方の見直しというのは、足の位置や膝の使い方のことだけではありません。足の裏がどのように床を捉えているか、重心の位置はどこにあるか、そういったことも含まれます。下半身の土台が安定すると、上半身は余分な仕事をしなくてよくなります。そうなったとき、肩の緊張が自然に落ちやすくなったという話は複数あります。
「肩を下げよう」と思って肩を動かすのでなく、足元から体の状態を整えていく。そのやり方で肩抜きが楽になったという声は、格闘技の練習者に限らず耳にします。
肩が落ちると、パンチの軌道が変わります。ぐっと力を込めるより、すっと体がついてくるような感覚に変わるという表現をされる方が多いです。蹴りも同様で、軸足の安定と肩の緊張は連動していることがあります。
「肩抜き」という言葉を聞いたとき、肩だけを操作しようとするのでなく、体全体の状態を整えるきっかけとして使えると、変化が出やすいかもしれません。
練習のある日、ふと肩がすっと落ちていることに気づいた、という方がいました。直そうとしていたのに、気づいたら変わっていた、ということです。
3年同じ指摘を受け続けているなら、肩だけでなく体全体の使い方を変えることを試してみる価値があります。もう一度アプローチを変えてみようと感じたら、まず体験から試してみてください。
脱力の考え方全体については、「力を抜くトレーニング」の記事で詳しく書いています。肩抜き以外の部分も含めて、力みと向き合いたい方はそちらも合わせてご覧ください。
パンチ力と体の使い方の関係については、「パンチ力を上げる方法」の記事に詳しくまとめています。肩の力みと打撃のつながりを、より具体的に知りたい方はこちらへどうぞ。


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